季節の移ろいに色合わせ。
渡邉さんの作品を特徴づけるもうひとつが“色”です。渡邉さんにとって色の探求は生命力の表現の過程でした。海や空、あるいは生き物たちといった自然が秘めるエネルギーを自分なりのフィルターを通してカタチにしていくこと。これが陶芸家渡邉陽子のミッションだそうです。海も空も動いている。その動きを色で見せるにはどうすればいいか。最初の出会いはトルコ釉でした。発色の良いトルコブルーと乾いた白の対比で命の源でもある“水”を表現しました。しかし、やがて表現したいことと自身の技法がなかなか合致しないことに悩みます。パーツの貼り付けが生きてこないのです。「色を使ってみよう!」。それが丁度、東広島に移り住んだタイミングと重なります。自然が織りなす森羅万象の変化を目の当たりにして、それまであえて制限してきた色を開放したのです。春の新緑の季節には萌えるように淡いグリーンを。田んぼに水が張られたときには、水面に映り込んだ空色を。秋になれば色づく樹々に触発されて赤や黄色を・・・・。季節の心地よい移ろいの一瞬を切り取るように、ろくろを回し、色を合わせ、炎に挑んで、生命(いのち)が吹き込まれた作品が生み出されます。